マーケティング関連の仕事に向き合っている人なら、「4P分析」という用語を聞いたことのある人も多いことでしょう。「4P分析」は、事業のマーケティング戦略を考えるときに使う一番有名なフレームワークを指します。
とはいえ、「4P分析」という用語を認識していても、正しく利用している方は多くないにではないでしょうか。
そこで、この記事では「4P分析」とどのようなものなのか、「4P分析」の基礎知識や利用時に抑えるべきポイントを詳しく解説します。マーケティング戦略に取り組んでいるWebマーケターやSEO担当の人は、ぜひ参考にしてください。
4P分析とは
4P分析とは、マーケティングにおける戦略を確立する際に用いられることの多いフレームワークです。なお、フレームワークとは、共通して使える考え方や分析・戦略立案・問題解決などを行うための枠組みのことを指します。
4P分析の名前の由来は、以下の要素の頭文字です。
- Product(製品)
- Price(値段)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
また、4P分析はマーケティングにおける戦略プロセスのひとつであるマーケティングミックスで使われます。マーケティングミックスとは、マーケティング戦略のうち「実行戦略」の部分を指します。
4P分析の位置づけ
4P分析は、マーケティングにおける戦略を立てる際に用いる6つの流れのうちの1つである「マーケティングミックス」に位置付けられます。マーケティング戦略を考える際には、マーケティングミックスを含む以下の6つの工程が必要となります。
- 環境を分析する
- セグメーションを行う
- ターゲット設定をする
- ポジションを確立する
- マーケティングミックスを行う(4P分析)
- 設置した戦略を実施し評価する
ここでは、それぞれのステップについて解説します。マーケティングにおける戦略の立案をするうえで、4P分析がどのような位置づけとなっているか説明するため、ぜひ参考にしてください。
環境を分析する
まず初めに実践すべきことは、自社が存在する業界の内部環境および外部環境を調査することです。主観を交えずに客観的に環境を分析することで、これから事業を展開する市場を見つけられます。
環境分析を深く実践することで、顧客のニーズを鮮明にできるほか競合他社との差別化にもつながり、結果として自社利益の向上が期待できます。環境分析を進める際には、以下の3つのフレームワークを活用するのがおすすめです。
- 5フォース分析:業界全体および競合他社が置かれている環境や収益の構造を明確にしたうえで、自社が利益を出しやすい領域を分析するためのフレームワーク。
- 3C分析:「顧客および市場」「競合」「自社」の3要素を分析し、自社が優位になるために必要とされる市場情報を明らかにするためのフレームワーク。
- SWOT分析:自社が置かれている内部環境および外部環境を、「強み」「弱み」「機会」「脅威」に分けて整理するフレームワーク。
セグメーションを行う
次に、想定される顧客のニーズを洗い出し、自社製品およびサービスが必要とされる顧客を明確にします。具体的には、市場にいる顧客を抱えているニーズに応じてグループ化する作業を行います。この作業のことを「セグメーション」と呼びます。
ターゲット設定をする
セグメーションによりニーズに合致する顧客を絞ったら、自社が持つ強みを存分に発揮できるターゲットを設定します。ここでどれだけ明確にターゲット設定を行うかによって、商品やサービスの売れ行きに差が出ます。
ターゲットを設定する際には、明確に絞ることが大切です。大まかに特徴を決めるだけでは、製品およびサービスの魅力が顧客に伝わらない恐れがあります。年齢・性別・居住地・年収・家族構成・ライフスタイルなど、さまざまな項目を明確に設定していきましょう。
ポジションを確立する
続いて、ポジションを確立する作業に移ります。ターゲティングの際に選んだ市場における自社のポジションを明確にしていきましょう。
ポジショニングを行うためには、競合他社が提供している商品およびサービスの機能・価格・品質などをリサーチして、自社が差別化を図れる項目や優位性を明確にする必要があります。
マーケティングミックスを行う
マーケティングミックスとは「実行戦略」と呼ばれることもあり、商品およびサービスをどうやって展開していくのか、具体的に戦略を立てることを指します。
この際、「4P分析」や「MAツール」などを組み合わせて戦略を立てていきます。ちなみに、「MAツール」とは、見込み客の育成および判別を支援するシステムのことを指します。マーケティングを進めるうえで、使うべきツールのひとつです。
設置した戦略を実施し評価する
設置したマーケティング戦略を実施したあとは、必ず評価を行いましょう。マーケティング戦略の実施によりどれだけの利益を上げることができたか・新規顧客をどのくらい獲得できたかなど、さまざまな指標から効果測定を行います。
マーケティング戦略に対する評価をつけられたら、今後の事業展開に活かすことで、事業の成長につながります。
4P分析の進め方
ここでは、「4P分析」の具体的な進め方について、4つのステップに沿って解説していきます。
Product(製品)を分析する
はじめに、製品およびサービスの強みを明確にしたうえで、顧客に選ばれるためにはどのような品質・パッケージ・デザインで売り出す必要があるのかを考えます。その他にも、購入後のアフターフォローを実施するか、実施する場合具体的にどのようなフォローを行うか、といったことも考える必要があります。
そのうえで、自社製品およびサービスの品質・デザイン・ブランド・パッケージ・保証などを決めていきましょう。
Price(価格)を分析する
顧客が製品やサービスを購入するかどうか決める際の重要な判断材料が価格です。
価格が高すぎると思うように売れないリスクがある反面、安すぎてもなかなか利益が上がりません。製品が持っている価値に釣り合う価格、十分な利益を期待できる価格を設定するように心がけましょう。
競合を分析したうえで、価格の安さをウリにするか、あえて価格を高く設定して質で勝負するか決めるのがおすすめです。
Place(流通)を分析する
Plaseでは、製品およびサービスを顧客に販売する際の流通経路や販売する場所のことを指します。
製品の強みや特徴、提供したい顧客増に合わせて、適切な流通経路・販売場所を設定する必要があります。同じ製品およびサービスを販売する場合でも、百貨店・コンビニ・ホームセンターなどの販売場所によって、顧客が抱く製品およびサービスに対するイメージは変わってくるでしょう。
さらに、近年では実店舗で販売するのではなく、インターネット上で売る方法をとる企業も増えています。コロナ渦の影響を受けてネットで買い物をする人が増えているためです。
Promotion(販売促進)を分析する
最後に、顧客に製品およびサービスを認知してもらうための方法を決めます。品質が高い・価格が安いといった魅力のある製品およびサービスでも、顧客に認知してもらえなければ思うように利益が上がりません。
看板・ポスター・チラシ・インターネット広告・SNSの運用・テレビCMなど、顧客の認知を促す方法はたくさんあります。設定したターゲット層の目に届きやすい方法を選択すると良いでしょう。
4P分析と4C分析の違いと関係性
マーケティング戦略を考える際のフレームワークとして、「4P分析」のほかにも「4C分析」というメジャーなものがあります。名前が似ていることもあり、「4P分析」と「4C分析」を混同してしまう人も少なくありません。
「4P分析」と「4C分析」の違いとして、「4P分析」は企業(売り手)の立場からマーケティング戦略を考えるフレームワークである反面、「4C分析」は顧客(買い手)の視点から展開します。
従来は企業視点の「4P分析」が主流でしたが、現代では顧客目線で考える「4C分析」を活用するケースも増えています。なお、「4C分析」の具体的な項目は以下のとおりです。
- Customer Value(顧客にとっての価値)
- Cost(顧客が費やす費用)
- Convenience(顧客にとっての便利さ)
- Communication(顧客と交わすコミュニケーション)
このように、「4P分析」と「4C分析」では主語が異なるのです。
4P分析を活用するポイント
「4P分析」を活用して売り上げを伸ばすためには、おさえるべきポイントがあります。ここでは、「4P分析」で成果を上げるための4つのポイントについて解説します。
4つのPに一貫性があるか確認する
製品(Product)・値段(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)の4つのPを設定する際には、個別に考えるだけでなく全体に一貫性をもたらしましょう。
例えば、ポップなデザインの商品にも関わらずパッケージがエレガントなものでは、顧客が商品およびサービスに抱くイメージを確立しにくいでしょう。また、インターネットをあまり使わないターゲットに対してインターネット広告やSNSで製品およびサービスを周知しても、認知が深まりません。
このような事態を防ぐためにも、4つのPに一貫性を持たせることが重要です。一貫性を持たせるためにも、俯瞰して4つのPを考えましょう。
4P分析と4C分析を併用する
先述したとおり、マーケティング戦略を考える際によく使われるフレームワークとして、「4P分析」のほかに「4C分析」があります。製品およびサービスを多くの顧客に届けて売り上げを伸ばすためには、両者を併用するのがおすすめです。
なぜなら、企業目線の「4P分析」を使うだけでは、顧客目線に立ってマーケティング戦略を決められないためです。どれだけ素晴らしい品質の製品およびサービスを作成したとしても、顧客のニーズを満たせなければ思うように売れません。
そのため、最適なマーケティング戦略をするためには、「4P分析」と併せて「4C分析」も活用する必要があります。
サービス業の場合は7P分析も利用する
メーカーがマーケティング戦略を考える際には「4P分析」が適していますが、サービス業の場合「7P分析」を活用することで成果を上げやすくなります。「7P分析」は、「4P分析」の他に3つのPを含んだマーケティング戦略です。
具体的には、「4P分析」に以下の3つのPが加わります。
- 人(People)
- プロセス(Process)
- 物的証拠(Physical Evidence)
スタッフの接客やサービスを意味する「人(People)」、サービスを顧客に提供する際の過程を意味する「プロセス(Process)」、顧客満足度などのサービスに対する客観的な評価を意味する「物的証拠(Physical Evidence)」を設定することで、サービス業における適切なマーケティング戦略を立てやすくなります。
4P分析を活かすMA ツール
「4P分析」を活用してマーケティング戦略を設定したあとは、MAツールを使って施策を実行しましょう。MAツールとは、自動でマーケティング戦略を実行してくれる便利なツールのことを指します。
さまざまな種類のMAツールが登場している昨今ですが、機能は大きく分けて2つです。ひとつめは、顧客のデータベースを作成し一元管理できるようにする機能です。そして、2つめの機能としては、構築されたデータベースをもとに顧客ごとに最適なアプローチを実行する機能が挙げられます。
これらの機能が搭載されたMAツールを活用すれば、顧客に製品およびサービスの強みやベネフィットを周知し、成約数の向上につなげられるのです。
まとめ
本記事では、「4P分析」の項目や進め方、「4C分析」との違い、「4P分析」を上手に活用するためのポイントなどについて解説しました。
顧客のニーズを満たしたうえで競合他社と差別化し、製品およびサービスの成約数を上げるためには、適切なフレームワークの活用が欠かせません。本記事で紹介した「4P分析」・「4C分析」・「7P分析」といったフレームワークを使いながら、成果につながるマーケティング戦略を考えていきましょう。
また、マーケティング戦略を実施したあとは必ず効果測定を行い、戦略をブラッシュアップすることで、更なる売り上げの向上が期待できます。ぜひ、本記事を参考にして「4P分析」を活用したマーケティング戦略の設定をしてみてください。